1880.12.30(Thu)

 私はトニーのところへ行って、いくらか慰められて帰ってきた。彼は例の絵 l'Atelier をぜひ私に描くようにと言った。私はそれを等身大に描ける。それは非常に面白くできるだろうと彼は言った。同時によい研究にもなれば、絵も出来る。私は厚意で受け取られてはならない。功績で受け取られねばならぬ。もしそれが悪くなるようだったら、彼は私にそう言ってくれるであろう。けれども彼は私が相当に成功すると思っているから、私にそれを勧めるのである。それから私たちは私自身の話に移った。私たちは2人とも私の絵に対する天分の現れることが遅いということに意見が一致した。けれども彼は、天分はしばしばそんな風になって後で現れることがあると言った。また3年の勉強ぐらいで大事業が期待されるものではないと言った。また私はあまり焦りすぎると言った。また結局は成功するに決まっていると言った。私はこれまでも幾たびか彼に頼んだように、遠慮なく真実のことを言ってくれるようにと言った。かつ彼とても真実を言わないことには興味を持たないから、要するに彼の言ったことは大き過ぎる言い方ではなかった。それで私は再び気を取り直して、絵を描こうと用意している。
 何という親切な優しい人だろう、トニーは。彼はもっとも才能ある人たちでも10年くらいではやっとものになるばかりだと言った。ボナは7年勉強しても有名になれなかった。トニー自身でも8年の終わりにまだ何物をも出品しなかった。私とてもそのことは知っている。けれども私は20までに成功しようと決心しているのだから、あなたはこの心持ちを理解してくださるでしょう。夜が更けてから私はまた不安になった。トニーは私の力を信じすぎているように思われる。何かの恐ろしいわなが前途に控えているように思われる。
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by bashkirtseff | 2009-02-10 13:18 | 1880(21歳)
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