1880.12.23(Thu)

 もう遅くなったので、私は肖像画をよして、サロンに出すつもりで、エスキスを始めた。ジュリアンが入って来て、大層良く行ったと言ったから、私は彼に着いて前部屋に行き、あれで良いだろうかと聞いた。結構です。しかしあれは若い娘の画材で、平凡である。私にはもっと何か面白いものが見いだせるだろうと言った。それから彼は、私がマダム・N…の肖像画をもう少し大きな寸法で、もう少し衣類を使って、実際に展覧会に出品するつもりで描かなかったことを非難した。断っておきますが、彼は私がサロンの話をしだすと、いつでもこんな風に私をいじめます。しかしこれがいかなる効果を私に与えるかを理解していただくために、私はこの肖像画が少しも私を喜ばせないということと、私はそれを親切から描いていたということと、モデルには少しも誘惑的なところがないということと、私はただ約束したから描いたのだということをあなたにお話ししておかねばなりません。この愚かなる親切心が私に何もかも取り外させて、私は何を提供するのが適当であるか、またどうしたならば私はもっとも良くすべての人を喜ばせ得るかを考えることが出来ないほどに私の頭を悩ますのである。あなたはこんなことがまれにはあると思いますか! 私があまり退屈に感じる時以外は大概はいつでもそうである。……
 それは身分などからではない。すべての人を幸福にしたいと思ったり、私自身でつまらない感情に悩まされたりするのは、皆私の性質である。あなたはこのことを知らなかったでしょう。私は今までわがままな人間として通っていた。それでは、何もかもそれに適合させてみなさい。
 それで私が早く仕上げたいと思っているこの肖像画が、今度の展覧会のことを思うたびに邪魔になる。今度の展覧会は1年間私の心を奪って、私はそれを夢見たり、それに美しい希望を懸けたりしていた。私は実際何だかどんなものも出品することが出来なくなりはしないかというような気持ちがする。私は気持ちがすると言う。なぜと言うに、もしあなたがそれを事実だと思うならば、私に対してあまりに残酷であるでしょうから。その上、この退屈な肖像画は、彼も言うごとく、アトリエで描いた方が利口でもあれば、またそれだけ良くも出来たであろう。
 さて、私のサロンの絵のことである。
 これだけ言えば、あなたは私が歯を食いしばって家に帰って、今泣いているように泣きださないために動かないでいようとしていたことを、別に不思議には思わないでありましょう。かつ私は今まで自分に何かできるものがあると思っていたのは、正気のさたではなかったに相違ない!
 おお、つまらない。
 今すべてのものは苦々しくなってきた。そうしてサロン問題は私を号泣せしめる。これでは3年も仕事をして、私は何物に到着したのだろう! 「あなたは異常な成功をなさるに違いない」とジュリアンは言った。しかし私は有能でなかった。すでに3年である。そうして私は何をしたか? 私は何物であるか? 何物でもない。1人の善良な生徒だとは言えるだろう。そうしてそれきりである。しかし異常とか、雷霆(らいてい)とか、閃光(せんこう)とかであるか?
 それは予期しなかった大不幸のごとく私に落ちかかってきた。……真理は残酷なものであるから、私は自分で誇張しているとすでに考えかけている。絵は私を引き留めた。絵のことだけでは私は大家たちを「驚かした」。けれども私は2年間絵を描いている。私は平凡以上であることは自分でも知っている。私はトニーも言うごとく、特殊の傾向をさえ示している。けれども、それはその点ではない。私は頭をひどく打たれたごとく、それで打ちくじかれた。それで私は恐ろしく悪く感じることなしには一瞬間もそのことをば考えられない。そうして、この涙!
 ここに目を改善すべき1つの道がある! ──私は道に迷って、疲れ果てて、死んでいる。何という恐ろしい憤怒であろう! 私は胸が張り裂けそうだ。ああ! 私の神様! ……
 私は人にも知られないで死ぬようなことがありはしないかと思うと、気違いのような気持ちになる! 私はあまりに絶望しているからそんなことが起こらないとも限らない。
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by bashkirtseff | 2009-02-09 12:50 | 1880(21歳)
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