1880.10.12(Tue)

 昨日ポルトヴァから次の電報を受け取った。──「貴族の人たちは皆私たちを通じてあなたのお父様の満場一致の当選に際してあなたに敬意を表します。私たちはあなたの健康を飲みます。──アバザ。マンデルシュテルン。」
 アバザはロシアで私の知り合いになった1人で、ポルトヴァの権威者である。以前は聖ペテルブルグ及びオデッサにおいてもそうであったが。
 マンデルシュテルンはその国での Maréchal de la Noblesse〔貴族の元老〕である。私の父がポルトヴァ州のそれであるごとくに。
 ここに私の電報の返事を書いておく。私は丁重でなければならぬ。なぜと言うに、家族のことは人のことではないから。……私はどんなふうにそれを言い表そうか。それは官僚的に、否、尊大に聞こえるであろう。
 「いんぎんなる厚意を賜り私はポルトヴァの貴族の尊敬すべき代表者たちに感謝して、彼らに1千の幸運を希望します。──マリ・バシュキルツェフ。」
 これは威厳があり、品位があり、大人物の電報のようである。しかし形容詞がたくさんで、電報の文体をなしていない。かわいそうな子どもさん、私はあなたを哀れみます。
 私は非常に周到に「ポールとヴィルジニー」を読み返してみた。私はあの善良な人たちの徳の描写において多数強調された文体の naivetés〔単純〕を喜んで許す。しかし私は今かなり泣いたところである。
 あなたは、ポールが近所から帰ってきて遠くから黒んぼの女のマリに呼びかけて「ヴィルジニーはどこへ行った」というところを覚えておいででしょう。マリはポールの方へ首を振り向けて泣きだすと、私もまた泣きだす。
 全くあのかわいそうな若い人が帰ってきて彼女を見いださなかったことは残酷である。そのとき彼は岩へ駆け登って船を見る。船は黒い一点となっている。……ここまで来るとあなたは彼の変わりに気違いになったように感じるでしょう。
 私は泣き、また泣く! そうしてポールがその前を駆けている犬に向かって、「おまえももうあの人には会えないだろう」というところになると、私が我慢が仕切れなくなる。そうしてヴィルジニーの手紙の中から、ポールへ送ってきたスミレの種が出てくる。ああ、恐ろしい瞬間は、彼女が去って、彼が岩の上から水平線上の黒い一点を眺めている時である。
 ベルナルダン・ド・サン・ピエールは自分でも書いたことを理解しなかった。それは率直な点において崇高な、感情において比類なき一節である。
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by bashkirtseff | 2009-02-04 19:03 | 1880(21歳)
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