1880.10.10(Sun)

 数人の来客とサン・タマンド。私たちは少し音楽をした。サン・タマンドは「ポールとヴィルジニー」で泣いた。私はその抑えられぬ感情を理解することが出来る。私もその本を読んで泣いたことがある。オペラの音楽でも同じところに行くと私も泣きだす。もっとも人気ある小説などではこの深い悲しみが起こらない。
 ああ! 実際私は自分の体の中に痛みのようなものを感じて、泣きだしたのである。
 もし人がこの記事を読んだら、私は冗談を言ってるのか、でなければ気違いになったのではないかと思うであろう。私は外観はそれほど哲学的でありかつ批評的であるから。
 朝の間をばルーヴルで過ごした。そうして見たもので目を驚かした。今でも私は美術というものを明瞭に理解していなかったような気がする。今までは見ないで、ただ眺めていたのであった。考えてみると、啓示のようでもある。私は世間の大多数の人間たちのごとくただ眺めて感心していた。ああ! 誰でも今の私のごとく美術を見てかつ理解したならば、普通の心境ではないのである。ある事物が美しいことを感じ、何故にそれが美しいかを理解するならば、それは真の幸福である。
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by bashkirtseff | 2009-02-04 18:59 | 1880(21歳)
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