1880.09.07(Tue)

 今日は雨。……私の生涯のもっとも不愉快な事件が頭の中を群がり過ぎる。その中には遠く過ぎ去ったことでありながら、それを思い出すと、急に体の痛みを覚えるように飛び上がって両手を握り絞らないではいられないようなものもある。
 私の周りのすべてのものは変化しなければならぬという私の発見は必要なことである。……私は自分の家族が嫌いである。私には叔母や母様の言うことが言わない先から分かっている。またどんな場合にも彼らのすることが分かっている。彼らはサロンで、プロムナードで、海岸でどんな顔をするか、それを考えると、私は歯を食いしばらないではいられない。……例えば、ガラスのきしむ音を聞かされるように。
 私の周りのものは皆変化してしまわねばならぬ。そうして私もいま少し落ち着いてきたら、彼らを相当に愛することができるであろう。しかし彼らは私を ennui〔倦怠〕で殺しそうである。私が何かの皿を拒絶すれば、彼らは驚いた顔つきをする。また彼らは食卓に氷を用いないためにも、それが私の気に触ると思う時は、あらゆる手段を実行する。また彼らは私の開けた窓を閉めるために泥棒のように忍び足で来る。その他1千のささいなことが私をいら立たせる。しかし、私はこの家に属するすべてのものにつかれたようになっている。
 何より不安なことは、こんな孤独の中で私はさびてしまいはしないかということである。この黒い気分が知能を濁らして私の頭を裏返しにしてしまう。私はこんな黒い雲が永久に私の性格の上に覆いを掛けて、私を苦い酸っぱい陰気な人間にしてしまいはしないだろうかと恐れている。私はそうなることを望まない。ただそれを恐れて、心は沈黙の間に悲しみに沈みそうである。
 私の挙動は完全だと言われている。年取ったボナパルト党の人たちがアドリイヌにそう言ったことがある。……否、私にはいつも一種の不安がのし掛かっているように思われる。私はいつも悪口を言われたり、軽蔑されたりして、名簿の中に書き込まれることを恐れている。……そうしてそのうちのどれかは、たとえ人は何と言おうとも、離れなくなるに相違ない。……否、私の家族は彼らが私をどんなにしたかということを少しも考えない。私の悲しみが私を驚かすのは、ただ女に欠くべからざる明るい性質が永久になくなりはしないかという心配のみである。
 なぜ私は生きているか? 何の役にここで私は立っているか? 何を私は手に入れたか? 名誉でもなければ、幸福でもなく、また平和でさえもない! ……
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by bashkirtseff | 2009-01-29 16:52 | 1880(21歳)
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