1880.09.02(Thu)

「そのほか、彼は多く読書して、人が自ら負うところの深甚真摯の教えを得た。これはいやしくも才能の人が20歳と30歳の間に求めたものである。」このバルザックの言葉は私を喜ばせる。
 今度私はリュ・ドゥ・ラヌラグ(底本:「ラヌラア」)のパシ45番地に1つの庭園を借り入れた。それは外光の習作を描くためで、1本の木の下にイルマを裸体にして、等身大で始めた。
 まだ相当に暖かい。それで私は急がねばならぬ。これが人生である。要するにそれでも結構である。私はどうしてこんなに何となしに不安を感じるのだか自分でも分からない。私には何だか煩わしいことが起こりそうに思われてならぬ。独りで閉じこもって仕事をしていながら自分で安心な気持ちになっていたい。……しかし人間は愚かでかつ悪意のある者だから、あなたがどこの隅に隠れていても、あなたを捜し出して煩わしさを与えようとする。
 それにしても何事が起こるのであろう? 私には分からないが、あるいは考えだされたものとか、あるいは誤り伝えられたものとかであるかも知れない。それが私に対して繰り返され、私を苦しませるであろう。……
 それともあるいは何か卑しむべきことが起こるかも知れない。さほど重要ではないが、ちょっとした恥辱になるようなことが。例えば、私の不幸のような。──それ故私はビアリッツに近づかないようにしている。
 ──なぜいらっしゃらないの。マダム・G…は言った。いらっしゃいよ。お母さまと叔母さまへは、私から話してあげますわ。……本当に、ビアリッツへいらっしゃいな。本当に立派ですよ。いろんな人に会えますわ。
 笛〔たわごと〕だ! 社交界の言い方で言うならば。私は1人でいさしてくれるなら、パシの庭園にいつまでもいたいと思っている。
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by bashkirtseff | 2009-01-29 16:47 | 1880(21歳)
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