1880.07.16(Fri)

 ジュリアンは私の絵を非常に良いと考えている。そうしてA…もそれが悪くはないということを承認しなければならなかった。なぜと言うにジュリアンはトニーよりもやかましいから。
 私はジュリアンに褒められて気違いのようになっている。
 私たちは明日パリを立つのである。それで私は旅行の前夜の煩わしさ、行李(こうり)とか、何とか、かとかを、我慢している。私は旅行した方が幸運である。なぜと言うに、旅行でもしなければアトリエは円満に続きそうもないから。私は今では争うべからざる首領である。私は忠告を与えたり、慰めたり、作品で非常に刺激したりする。私は親切で、優しくて、世話好きで、人に愛されて、また友達を愛したり、果物や氷で彼らをいたわったりする点において一種の coquetterie を持っている。
 この間私が出て行くと、彼らは直ちに私を褒め始めた。マドモアゼル・マリ・D…は話しながら全く威圧されてしまい、マドレエヌはあなたも知っていられる通り絵を始めたがっているが、私に教えてくれるようにと言いだした。私は実際完全に教えられる。もし私が自分で教える通りに描けたなら満足なものが出来ただろうと思う。
 ──全くそれは立派な教師であるということに帰着するのです。
 ジュリアンは私がそんな頭を持ちながら進めないことを惜しがって、そんな頭があったら展覧会にだって成功するはずだと言った。──「それは性格を表すもので自然に見えます。大胆にかつ真実に。」
 私の小さいモデルは平凡でない首を持っている。すなわち、非常に大きな目と、著しいまぶたと、軽く驚いた表情をしている著しいまゆ毛の弧線と、上の方へそった鼻と、かれんな口と、美しい顔色をしている。彼女は若いけれども、どことなしに汚れたような顔つきをしている。ただしそれほど不愉快ではないが。その金髪は、染めたものだと私には思われるが、暗緑色の背景の上にライオンのたてがみのようにきれいに整えている。
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by bashkirtseff | 2009-01-22 13:27 | 1880(21歳)
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