1880.06.20(Sun)

 サロンは今夜きりなので、私は朝の間をそこで過ごした。「善きサマリア人」が名誉賞を得ている。しかしモローの絵がどんなに良く出来ているにしても、名誉賞はそうやすやすと得られるべき物ではない。それは功績に与えられるのではなく、サロン最上の絵に与えられるのである。
 バスティアン・ルパージュの景色は完全でなく、人物を台無しにしている。しかしその人物は何という見事なことだろう。その首は驚くべき傑作である。モローの絵は今日はほとんど私を悩ますけれども、バスティアン・ルパージュの絵は実に立派である。私はこの2つの絵の間を行ったり来たりして見ていたが、それからエンネの「居眠り」と「小さいニンフ」の所へ行った。エンネは美そのものである。それは完全な自然ではないが、しかし自然でないことはない。かつ立派である。彼の「たそがれのニンフたち」は人の追随を許さないものである。彼はいつも変わらなく魅力を持っている。ルクセンブルクにある彼の裸体の人物は近ごろのほどにない。私の見たうちでは去年の絵が彼の描いた最上である。私はそれを熱心に買いたいと思った。私は毎日それを見ていたいと思った。ああ! 私が金持ちであったら!! ……
 S…は「聖マタイ」を持っていないだろう。
 モローの絵が私に影響したのが特殊の影響である。彼はバスティアン・ルパージュやエンネのそばに出ればむしろ退屈である。エンネは! ……形容を絶した美である。
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by bashkirtseff | 2009-01-20 14:44 | 1880(21歳)
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