1880.05.16(Sun)

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ギュスターヴ・モロー「善きサマリア人」

 今日は1人で早くサロンへ行った。招待券を持っている人だけが来ていた。私は「ジャンヌ・ダルク」を良く見た。それからモローの「善きサマリア人」をことに良く見た。その前に腰掛けて、片眼鏡を出して、良く研究した。この絵はこれまでに見たどの絵にも増して私を喜ばせる。邪魔になるものが何にもなく、すべてが単純で、忠実で、全く自然である。そうして少しもあの嫌な習俗的なアカデミックな美を思い起こさせない。
 それは実に見事である。ロバの首から、景色から、外とうから、足のつめまでが立派である。調和があって正しく、すべてがあるべき通りに出来ている。
「ジャンヌ・ダルク」は首が崇高である。
 この2つの絵は2つの隣り合った部屋にあるので、私は行ったり来たりしてそれを見た。私がモローの絵を見ながら、あの善良なS…のことを考えていると、彼自身が私に気が付かないで、その前を通り過ぎた。そうして私は帰ろうとすると、彼は庭から私の絵を指さして新聞記者らしい連れの男に何か話していた。
 それからサン・マルソオの「道化者」! 去年のサロンが閉じられた時、私は作品がそこになくなって後までも、名誉賞のことが頭に残っていた。6カ月後には私はサン・マルソオを誇張して考えていたのだと思った。ところがこの道化者が再び私の目を見張らせた。
 最初の日に私はそれが誰の絵だか見当が付かないながらも、びっくりしてそこに立っていた。こんな不満足な画題でありがなら、しかも何という才能だろう。才能以上である。彼は完全な芸術家である。だからほかの彫像製造人のごとく評判にはならない。彼らはサン・マルソオのそばに行くと皆製造人である。
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by bashkirtseff | 2009-01-16 14:46 | 1880(21歳)
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