1879.12.28(Sun)

 ポオルは結婚することになった。私も同意した。その訳を話しましょう。彼女は彼を愛して、彼と結婚することを非常に欲している。彼女は相当に知られた、同じ地方の、やや離れているが、近所と言って差し支えのない土地の、良い家庭に育って、若くて、きれいで、学問もあれば気立ての良い婦人である。彼女は、ポオルが Marechal de Noblesse〔貴族の将軍〕の息子であって、パリに派手な身内の人たちがいるというので、いくらか得意になっている。それだけ私も同意しなければならぬ。
 ロザリの不注意から、ポオルへあてた私の手紙は、ついに届かなかった。母も同意した。その娘は次の電報を母によこした。

うれしくぞんじます。ふかきかんしゃをははうえにささげます。なるたけはやくかえります。
──アレクサンドリイヌ

 その娘さんはパリの身内を気にしている、ことに高慢で気難しい私を気にしているということである。でも私は「否」というような人間ではない。私は彼女が愛するように愛したことがないから、人に迷惑を掛けるようなことをしようなどとは思わない。私たちが意地悪になりかけているというのはそれは容易に言えるかも知れない。けれども、同じ人間仲間に苦痛を与えることになるような場合には、2度とそのことは考えなくなる。もし私に煩もんがあるとすれば、人に煩もんさせれば私は治るでしょうか? 私が親切であるのは善意からではなく、そうしようと思うからである。それが私に苦しい。実際わがままな人間は善でないことをしてはならぬ。悪をなすには人は不幸すぎる。けれども世間には害悪をなす事を喜ぶ人間もあるようだ。……人は皆好き好きである。ことにポオルは紳農以上の何者にも決してなれないであろうから。
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by bashkirtseff | 2009-01-06 14:27 | 1879(20歳)
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