1879.11.08(Sat)

 門番の女の肖像を仕上げた。そうして非常に良く似ている。それはこの下宿で無限に喜ばれた。娘も、婿も、孫娘たちも、妹たちも、皆大喜びである。
 不幸にしてトニーはこの熱心に加わらなかった。彼は悪くはないと言って褒めた。……しかしもっとうまくいきそうなものだと付け加えて。私が絵の具よりも線の方に才能を多く持っていることは拒まれない。線、組み立て、形、すべてこれらはひとりでに出て来るけれども、絵画的の一面は同じ程度に容易には発展しない。彼はこんな風にして私が暇をつぶしていることを好まない。私はこの状態から脱して、これを償うべきことを何かしなければならぬ。
 ──あなたはただなすり付けているのです。あなたは非常に才能があって、有望なだけに、甚だ困りますね。
 ──私だって困っているのです、ムッシュ。でも、私にはどうして変えていったら良いか分からないのですもの。
 ──このことは早くからお話ししたいと思っていたのです。あなたはあらゆる方法でやってみなければいけません。多分出口を見いだすことだけが問題なのでしょうから。
 ──何をしなさいと私に言って下さい。模写とか、彫塑とか、生物とか? 私は何でも言って下さることをいたします。
 ──何でも言うことをやってご覧なさい。ねえ! そうしたらきっと切り抜けることが出来ましょう。この次の土曜日に私の所へ来て下さい。また詳しく話しましょう。
 私はずっと以前に土曜日に彼の所へ行くべきであった。生徒たちは皆そうしているのである。確かに彼は良い人である。
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by bashkirtseff | 2008-12-24 09:54 | 1879(20歳)
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