1879.08.04(Mon)

 私は眠れなかった。かわいそうなあの小さい犬が絶えず私の目の前に見えていた。非常に憶病になって門番のそばへも寄り付かなかった。どこへ行くという当てもなしに。
 私は涙を2、3滴流して、神に犬の見つかるようにと祈った。私は何事かを願う時には自分にささやいて祈る癖がある。この祈りを言って心の休まらなかったことはなかったように記憶している。
 今朝皆が私の名前を呼んで、犬を連れて帰った。かわいそうなやつは非常に飢えかつえていて、私を見てもそれほどの喜びも示さなかった。
 私は彼はいなくなったものと思っていた。家の人たちは私を慰めるために殺されたのだろうと言っていた。
 母は本当に奇跡だと言う。なぜと言うに、私たちが失った犬を見いだしたのは今度が初めてであるから。もし私が祈ることを話したらば母はさらに驚いたであろう。けれども私は話したくないので、ただここだけに書いておく。自分だけの考え事や祈りを繰り返したり書き留めたりしていると愚かにかつこっけいに見えるものである。
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by bashkirtseff | 2008-12-20 13:46 | 1879(20歳)
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