1879.06.09(Mon)

 私を駄目な人間にしてしまうものは言うまでもなく暖かい重苦しいこの天気である。今日は終日働いて、その上、仕事を怠けまいと決心した。けれどもひどく気がくじけている。
 今夜私たちは外務省の舞踏会へ行くことになっている。私は平凡にきり見えないかも知れぬ。眠くてたまらない。
 私は succès d' estime〔尊敬すべき成功〕を望んではいない。何だか平凡なばかな女のように見えそうでならぬ。今では「征服」なんかいうことは考えてさえもいない。私は良い服装は着るけれどもその中へ魂をば投げ入れない。人気というようなことも決して考えない。私は何物をも見なければ何人をも見ない。ただうるさくてたまらない。絵のことよりほかに私は何にも考えない。私には知恵もなければ、話も出来ない。私が話をしだすと、退屈になるか誇張してしまう。……私は遺言書を作っておかねばなるまいと思う。今の状態は続きそうもないから。
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by bashkirtseff | 2008-12-18 10:50 | 1879(20歳)
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