1879.01(Wed)

 終日私は思い続けている、青い海や、白い帆や、輝かしい空のことを……
 アトリエに入っていくとP…がいた。この年取った成り上がり者は、1週間もしたらローマへ行くつもりだと言った。そうして話の中にカタルビンスキその他、私たちの知人の名前が出た。私は日光や、緑樹の間の大理石や、廃趾や、立像や、教会堂や、そういったような光景の前にぼうぜんとしてわれを忘れてしまった。カンパーニュ! あの荒原、そうだ、しかし私はあの荒原が好きである。ありがたいことに、私よりほかにもあれが好きだという人はたくさんある。
 あの神聖な芸術的な空気。それを考えると、私のここにいるのが腹立たしくなって仕方がない。私はあそこにだって画家をばいくらか知っている!
 人間には3種類ある。第1はすべてそういったようなものを愛する人で、芸術家で、冬は寒く夏は耐えられないカンパーニュをもいやな広野と思わない。第2は芸術を理解もせねばその美を感じもしないで、それでいてそれを所有しようともせず、ただ前者のごとく見ようとする。この後者は私はそんなにいやではない。何となれば、彼らは自分の赤裸々を見て、それを隠そうとするから。第3種は第2に似て、その良い情操をかいでいる。私のきらいなのはこの種類の人間である。彼らはあなたをばかにして、いやな気持ちを与えるでしょう。彼らは何物をも理解せず、何物をも感じ得ない。芸術などは無意義なものだと言い放つ。そうして狭量で、無感覚で、不愉快なまねをしながら、イタリアの完全な日光の中をのたうっている。
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by bashkirtseff | 2008-12-08 12:04 | 1879(20歳)
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